はこぶ、はこぶ。

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 ***  行った先の公園で。俺は、他にも数名の男女が待っているのに出くわすこととなった。二十代から三十代、比較的若い男女が多いらしい。総勢、十数人くらいであろうか。 「このたびは、ゲームにご参加頂き誠にありがとうございます!」  そこに現れたのは、どこぞの漫画に出てきたような、仮面をかぶった胡散臭い男だった。 「今から、皆様においでくださったお礼金をお配りします。賞金百万円とは別に用意させていただきました。皆様の生活のため、有意義にご活用ください」  恐らく。此処に来た連中はみんな、怪しいメールであるということを理解していたし、ヤクザか何かが絡んでいるのではないかと疑ってもいたのだろう。やってきた案内人の男が、仮面をかぶって顔を隠しているともなれば尚更だ。  だが、それでも彼らがやってきたのは、俺と同じようにお金に困っていたからに違いない。  案内人が全員に分厚い封筒を配ってみせた途端、誰もが目の色を変えていた。本当にお金が貰えるんだ、という実感を得たためだろう。俺も当然、その一人に他ならない。此処に来ただけで十万円も貰えるだなんて、誰も想像していなかっただろうから尚更だ。そう、だから。 「それでは会場にご案内いたします。皆様、こちらの車に乗車してください」  皆が色めきだって、用意された複数の車に乗り込んでしまったのである。  自分達がどこに連れて行かれるのか、なんの説明もなかったというのに。
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