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僕は電話を終えると未だ壁際に立ち尽くしている女性に何が起きたかを聞いた。
「自宅に帰るため表通りを歩いていました。突然、車の中からあの男に声を掛けられ、強引に連れて行かれそうになったんです。それでこの裏路地まで逃げてきました。でも追いかけて来た男に捕まってしまって……。そこにあのおじいさんが現れて私を助けようとしてくれたの。でもナイフで刺されてしまって……」
女性はゆっくりとそう説明してくれた。
「災難でしたね。あとで一緒に警察に行きましょう。その前に僕は医師なので、この男性を僕の病院に連れて行きます」
「私もご一緒して宜しいですか? おじいさんにお礼が言いたいので……」
僕は頷いていた。
僕達は程なく到着した救急車で老人と一緒に帝国大学病院に向かった。
その道中、同行している女性は田所真由さんという名前だということを聞いた。
老人とは全く面識が無いとのことだった。
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