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「内藤さん、塩酸エピネフリンを五ミリグラム投与してくれ!」
「はい先生!」
内藤さんがラインを取っている太腿部分に注射で薬剤を注入してくれる。
僕は除細動器の金属パッドにジェルを塗りながら心臓マッサージを続けている田中さんに声を掛けた。
「田中さんどいてくれ」
田中さんが振り返って頷くとマッサージを中止し、大橋さんの肌蹴させて場所を開けてくれた。僕はパッドを彼の右胸と左脇腹に当てた。
「二百ジュールで除細動する。離れて!」
そう言いながら僕はパドル上部のショックボタンを押した。
彼の身体がビクンと跳ねた。
結局、大橋さんはその後蘇生することなく亡くなった。僕は肩を落として陰圧室を後にした。これでこの病院で亡くなったCOVID-19の患者さんは三人目だった。
僕達医療関係者はこのウィルスの収束を心の底から願っていた。
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