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僕は残った女性の所に駆け寄る。
「大丈夫ですか?」
その女性は二十歳前半くらいだろう。瞳に大粒の涙を浮かべている。
「あっ……わ、私は大丈夫です……。でもおじいさんが……」
僕が倒れた男性を見ると、それは先ほどのホームレスの老人だった。
彼の右太腿にナイフが刺さったままになっていて、そこから流れた血液が地面に広がっている。
「大丈夫ですか?」
僕は老人の身体を叩いて聞いてみたが意識は無い様だ。幸いな事に胸は上下しており頸動脈も振れている。でも彼の右後頭部にも傷が見える。
僕はペンライトで瞳孔を確認した。
「右目の対光反射が無い。倒れた時に頭を打って脳ヘルニアを起こしたのか……? まずは足の止血をしないと……」
僕は持っていたスーパーのビニール袋から買ったものを地面に投げ出すとその袋で彼の大腿部を締め付けた。
そして立ち上がると携帯を取り出して救急車を呼んだ。
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