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家への帰路。ステアリングを握りながらも、私は心ここにあらずといった状態だった。百キロを超える道のりの間、よくもまあ事故らなかったものだ。
そして、帰宅後も私は呆然としたままだった。
あの二人は、私とはもう何の関係もない。単なる他人だ。そう言い聞かせてもダメだった。
島田 明日香が妊娠している。それだけで、底なしの敗北感に私は打ちひしがれる。完膚なきまでに彼女を叩きのめしたはずなのに。
私が望んでも得られなかった、我が子を育てる喜び。それを彼女はいとも容易く手に入れたのだ。
そして、わざわざそれを私に伝えてきた、良祐さん……おそらく、自分と彼女をこっぴどく痛めつけた私に対する、ちょっとした意趣返しのつもりなのだろう。やってくれる。
幸せそうな二人が憎かった。だけどそれは私の醜い気持ちの成せる技だ。自分を裏切った人間なんか不幸になればいい。無意識に私はそう願っていた。それに気づかされた私は、余計に落ち込むばかりだった。
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