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 私は「瑞貴ちゃん」と呼んでいる。三歳の頃から私の教室に通っている、小学六年生の女の子。彼女には早くから非凡な才能の片鱗がうかがえた。   とにかく飲み込みが早い。教えたことはすぐマスターする。そして演奏時は人並外れた集中力を発揮し、ほとんどミスタッチをすることがない。ただ、常に無口で無表情。下手に顔立ちが整っているせいか、余計に冷たい印象を周囲に与える。実際コミュニケーションも不得意で、友達もほとんどいないようだ。昔は彼女にも一人だけ仲の良い女の子がいて、一緒に私の教室に通っていたのだが、その子が指を怪我して教室をやめてからは、彼女の孤独な傾向にさらに拍車がかかったように思える。  それでも。  私は瑞貴ちゃんの才能に惚れ込んでいた。彼女は本物だ。彼女ならば、私が夢見ながらも果たせなかった国際コンクール出場も叶えることが出来るだろう。
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