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だから私は、それまで私が得た技術の全てを彼女に叩き込んだ。それを彼女は、乾いた砂にしみこむ水のように、次から次へと吸収していった。今では全国クラスのコンクールに出場出来るほどの腕前だ。テレビなどのマスコミにも何度か取り上げられている。期せずして、彼女は私の教室の広告塔になった。おかげでここ1~2年は生徒が倍増している。
本当に無愛想な女の子だけど、とにかく私は瑞貴ちゃんが可愛くて仕方なかった。彼女にだって感情がないわけじゃない。ただ、不器用で傷つきたくないだけなのだ。だから仮面を被っている。
瑞貴ちゃんを見ていると、こんな子が欲しかったな、と時々思う。私だって彼女くらいの子供がいてもおかしくない年齢だ。だけど、良祐さんとはついに子供はできなかった。そして齢四十を迎えた今、おそらくもう私には子供は一生望めないだろう。その代わり、私には二百人を越える教え子がいる。それで十分だ。
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