ブロローグ

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春... 都会から電車で2時間ほど離れた場所にある駅。田舎...というほどでもないが、緑の匂いを感じる。 ゆっくりとスピードを落とし電車が止まる。 間抜けなブザー音を合図に扉が開いた。 気だるげな駅員のアナウンスを聞きながら降りていく片手で足りるほど少ない乗客たち。 扉付近にいた青年はいかにも重そうな雰囲気を出すキャリーケースを軽々と持ち上げ、ホームに降り立った。 キャリーケースには様々な国名のラベルが貼られ、キャスターの擦り減り具合やケースの表面の傷から使い込んだ跡が見られる。 電車が発車したことで遮られていた太陽の光が青年の顔を照らした。 180cm程の高身長に、服の上からでもわかる程鍛え上げられた筋肉。光に透かすとブロンドにも見えるブルネットの髪。 高級感がありつつも趣味の良いデザインの腕時計を見つめる瞳は琥珀のよう。 その横顔は日本人の面影を残しているが、は っきりとした目鼻立ちから異国の血筋を感じる。 美しい男がそこにはいた。 「あぁ.... トイレに行きたい」 真顔でクソみたいなことを言っていても絵になってしまう。 なぜなら顔がいいから
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