2.ざわつく心

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全身をベッドに預け、乱れた呼吸を整える 隣ではタプンと音がしそうな程液がたまった避妊具を外す紡 何回体を重ねてきたか分からないけど 未だにこの光景になれない.... コレが...俺の中に入って 俺で気持ちよくなってくれたんだって思うとむず痒い気持ちになる ニヤけるのを隠すように背を向けて顔を枕に埋める 後ろではティッシュをとる音が聞こえた数秒後、丸める音とゴミ箱に付けられたビニールの音が響いた ベッドが軋む音と共に背中に紡の肌が触れる 「行為の時の乱れた若葉も好きだけど、 ゴム外してる姿をこっそり見て可愛い顔をする若葉はかなりクるなぁ〜?」 「うるさいっ。」 体に巻き付く俺より小柄な体は遅い成長期が来たのか節々が痛むらしい 痛いならやめとけばいいのに 『したい』の一言で始まった情事 俺が、断れるわけないだろ... お前のことが好きなんだから。 背中や首にキスをされながら話すのは 今日のこと もちろん目玉は1年の2人 夕方、初々しいオーラを放った2人が寮に帰ってきた。 付き合ったとかそういう言葉はなかったが、 みんな一瞬で理解し彼等を祝福した。 「めでたく1年2人もお付き合いを始めたし...」 「あぁ。」 「僕らもその波にのろうと思うんだよね〜」 「....えっ?」 突然のことに思考が止まった。 波にのるって...なんだ、どういう事だ。 「みんなに言っちゃおうか」 幸せな気持ちがいっぱいだったのに... 後ろから聞こえた言葉に 熱くなっていた体が急激に冷えていく 渚や翔のようにみんなに祝福されたい 紡は俺のものだって、俺は紡のものだって周りに知らしめたい そうやって、思っていた...けど! 言ったら... お前の実家にバレて引き離されるじゃねーか 心がざわつく 目頭が、熱い 「若葉。僕は周りの反応じゃなくて お前の気持ちが聞きたい」 体の向きを変えられ、 紡の茶色の鋭い目とかち合う 月明かりだけでは表情は見えないが声色から真剣なのが伝わってくる 紡は京都にある歴史が古い老舗料亭の長男だ 以前までは富裕層が主な客だったが、 紡のコンサルティングで最近では若年層の客も集まってきているらしい 歴史がありつつも時代の変化に対応する 人気の料亭の長男 相手が俺みたいな節操なしのアバズレの子どもなんて....しかも同性... 彼の家族は誰も許してくれない... むしろ誰が許してくれるんだろうか。 引き離されるぐらいなら... この気持ちを周りには知られたくない.... 寝転んでいた体を起こして着替えよう立ち上がる が、腕を掴まれベッドに座る形で戻される
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