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「ーーーは…?」
突然見たことのない景色に囲まれた樹は戸惑いを隠せなかった。
甲冑に身を包み生き絶えた男達の屍からは
生々しい鮮血が流れ出しており、苦悶に満ちた表情はゲームで再現されることのないリアリティを樹に突き付けてきた。
「…こんなの、ゲームな訳がない…」
一瞬、樹の脳裏には『戦国ゲームの世界に転生?!』なんて
自分が主人公のラノベタイトルが思い浮かんだが、
そんなポップな雰囲気を打ち消すほど
初めて見る死体の山はショッキングなものであった。
樹は動揺で震える身体を落ち着かせるように、自身に言い聞かせた。
落ち着け。
どうやらここは…あのゲーム同様
甲冑を着た兵達が戦っている時間軸らしい。
まさか、本当の戦国時代なのか?
…だとしたら、ここは西暦何年の、どの地方なんだろう?
少しでも冷静になるために、何か手掛かりを探そうと考えた樹は
えずきそうになる口を押さえながら死体の山にしっかりと目を向けた。
すると、死んでいる兵の中で、背中に旗を挿した状態で倒れている男を発見した。
おお、あれはもしや戦旗ってやつか?
あのゲームで見たことがあるな。
樹が紋様を確かめようと、恐る恐る近付いて行くとーーー
「未だ生き残りがいたか!!」
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