抗う二人に祝福を

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 ***  窓の向こう。星が、どこかで聞いた歌のようにキラキラと瞬いている。もうすぐ有名なナントカ流星群が見られる時間帯らしい。ランプの火を一つだけつけて、こっそり起きている二人である。両親や執事にバレたら大目玉だが、一緒に怒られると思えば怖いものなど何もなかった。  あの事件から、二週間過ぎた夜のことである。 「なあ、アート」  ベッドでごろんと横になって、本を読んでいると。ぽふ、っとそんなアーサーの傍に座ったマリオンが、声をかけてきた。 「そろそろ時間だから、本から顔を上げた方がいいと思うのだけど。ここ最近、前よりもずっと難しい本を読むようになったみたいだけれど、どうしてなんだ」 「ん」  本から顔を上げると。アーサーは、そっとマリオンの髪を撫でながら、言うのである。 「政治の本。俺、決めたんだ。偉い政治家になって、この国を変えるんだって。階級差別と、それからオメガへの差別をなくすんだ」 『俺も、アートが、好き……!アートの子なら、欲しい……でも、それは……それは、やっぱり、こんなんじゃ嫌だ……っ』 「俺みたいなお馬鹿が、真面目に勉強やりたいと思うようになるとは思ってもみなかったよ。……まあ、元が頭空っぽだから、どこまで上手く行くかわかねーけどさ。でも、やりたいことが決まったから、それにだけは嘘つかないで頑張りたいんだ」 「やりたいこと?」 「そうだ。……お前を、幸せにするんだ。家とか階級とか、そんなの関係ない……平和な国にして」  そう告げた途端。そっと、アーサーの手から本が払い除けられた。え、と思った瞬間、唇に甘い感覚。  キスをされたのだ、と気づいたのは。真っ赤になったマリオンの顔が、離れていってからのことだった。 「それじゃあ、ダメだな」  彼は微笑んで、告げた。 「俺を幸せにするんじゃない。“俺達が”幸せになるんだろう?二人で、一緒に」  二人が、初めて結ばれるのは。  この後、約一週間後。同じように星が綺麗な夜のことであったという。
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