1167人が本棚に入れています
本棚に追加
「――ねえ、何で庇ってくれたの?」
三人を無理やり追い出した由真は、玄関の鍵をしっかりと閉めると、菫が居る居間へと戻って来た。しかも、眉間に皺を寄せ、まだ怒っている状態で。
そんな由真に、菫は問う。
何も言い返せなかった菫の代わりに怒ってくれたのは、心境の変化があったのか、それとも別の理由があるのか、菫は気になって仕方がない。
「……菫ちゃんが泣きそうだったから」
ちょっと伺うように、菫を真っ直ぐに見つめた由真の言葉に、菫は泣きそうになる。
しかも、由真が菫の名前を呼んでくれた。
その衝撃の方が強い。
出会ってから頑なに菫を拒み続け、近寄って来なかった由真に名前を呼ばれるだけで、菫は嬉しいと思った。
「ありがとう。……助けてくれて、そして、名前も呼んでくれて」
「……別に」
素直に感謝する菫に照れているのか、由真が恥ずかしそうに一言呟くと目を逸らす。二人の間に流れた空気は温かく、そして、もどかしい。
それは、十四年間離れていた姉妹の溝が、少しだけ埋まった瞬間だった。
「それにしても良かったの? 海人にあんなこと言って。海斗のこと好きなんでしょ?」
最初のコメントを投稿しよう!