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1日常の崩壊
一人暮らしを初めて早、十年。
お風呂とトイレが一緒のユニットバス。一K十畳のアパート。狭いながらも、これが、青山菫の城だった。
大学を卒業し、働き始めてからずっと同じ部屋。二年事に更新の通知が来る度、他の物件を探そうか迷った時期もあった。
でも、何をするのも邪魔くさいと思ってしまう菫は、探すのも面倒で、さらに引っ越し費用や初期費用もかかる。
何よりも仕事が忙しかった。
そう思うと狭くても住めば都。そんな言葉を思い出し、ずるずると居ついてしまった。
ズボラで一人が大好きの独身三十二歳。周りの友人達は結婚して子供が生まれると遊んでくれない。
新しい環境になると、自然と付き合いはなくなる。現在、交友関係は無いに等しかった。
そんな菫も、ある理由で強制的に実家へと帰ることになった。
「……ここで、もう少し過ごしたかった」
肩よりも少し長い黒髪を一つに結び、家具も荷物もなくなった部屋を菫は見渡す。
手には雑巾と、足元には濁った水が入ったバケツ。
最後の奉仕とばかりに、フローリングに跪き掃除を始めた。
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