1168人が本棚に入れています
本棚に追加
「菫ちゃん。一日中家にいるのって暇じゃないの?」
夏休みの間、毎日のように寝そべって、アイスを食べていた由真に言われる筋合いはない。と、菫は苦笑する。
今も由真は扇風機を独占してアイスクリームに夢中だ。
「別に。大人の夏休み貰っている感じで楽しいけど?」
「……長い夏休みだね。一年でしょ? 良いなあ」
今日は夏休み最終日。
宿題をやっとの思いで終わらせた由真は、明日からの学校が憂鬱らしく、ぶつぶつと文句を言い始めた。
それがなぜか菫へと向かう。
「――真面目に働いた私へ、神様がくれた人生半分ご苦労さんってご褒美よ。それに食事作って洗濯して、掃除して買い物に行って色々忙しいの。ダラダラしている訳じゃないわよ」
菫がえんどう豆の筋を取りながらそう答えた。
新学期が始まるせいか、市役所の教育課に勤める海人の仕事も慌ただしいらしい。
由真の前では普段と変わらない姿を見せてはいるが、少しの間だが一緒に暮らしていた菫は気が付いた。
疲れ切っていると。
そんな海人のためにと、彼の好きなスナップえんどうを、菫はかいがいしく用意していた。
最初のコメントを投稿しよう!