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そんな菫の隣で、だらけて仕方がない由真は「学校嫌だ」と一時間事に呟き駄々をこね、菫は苦笑する。
夏休みの最後は少しセンチメンタルになるらしい。
それは菫も経験がある十代特有の症状だ。
終わって欲しくないのは当然で、でも、始まらないと一年が終わらない。だが、学校に行きたくない。
「早く冬休みにならないかなあ。ねぇ、冬休みはどこかへ行こうよ。本当の家族になる前に、疑似家族ごっこしよう」
まだ新学期も始まっていないのに、もう冬休みの計画を由真がたて始めた。
しかも碌でもないことを言い始める。
海人と同居している時点で、疑似家族同然だと菫は何とも言えない顔をした。
「疑似家族って……私、まだ海人と結婚するって決めてないよ」
確かにそれとなく菫は匂わせたが、まだ結婚へと辿り着けない怖さがあった。
海人の浮気騒動が嵌められた嘘だとはわかったが、一歩が踏み出せない。
「ええ――! なんで? 海人君、優良物件だよ。あれ以上の良い男なんて私、見たことないけど。……菫ちゃんはあるの?」
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