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「由真ちゃんだね? 由紀子が失礼なことを言ったみたいで、ごめんね。彼女はまだ海人が心配で過保護なんだ。僕が叱っておいたから許してくれるかな?」
そう言って空嗣は、ちゃぶ台を挟んで由真の前へと座った。
「……あの失礼なおばさんの旦那さん? 海人君と違って女の趣味悪い」
「由真! 失礼なこと言わないの! 申し訳ありません」
土下座するように頭を下げる菫に対して、空嗣は気にしていないと手をふる。
「大丈夫だよ。菫ちゃんも悪かったね。由紀子が失礼なことばかり言って。話し合ったから、もう君には何も言わないよ。また問題が起きたら遠慮なく言って」
この様子だと空嗣は全部知っている。そう確信した菫は途端に申し訳ない気持ちになった。
空嗣だけだった。
家柄も普通で父親は浮気中。そんな訳ありな菫を、温かく熊井家に向かい入れてくれたのは。いつも変わらぬ態度で接してくれて、その柔らかな雰囲気は以前と変わらない。
「……ありがとうございます」
「大丈夫だよ。ただ、今日はお願いがあって来たんだ」
「お願いですか?」
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