28 訪れた人物

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「うん。あ、お水かお茶貰っても良い? 暑くてかなわないね、今年の夏は特に」  確かに今年の夏は、例年にも増して熱帯夜が続いている。八月が終わる今も残暑が厳しい。  そう言うと、空嗣はハンカチを取り出して額に滲んでいる汗をぬぐう。 「あ、すぐに用意します」  菫は慌てて立ち上がった。  台所へと急ぐ菫を見ながら、由真は空嗣を見た。 「菫ちゃんを泣かしたら海人君を追い出すから」 「おや。ずいぶんと信用がないね。大丈夫だよ、僕は菫ちゃんを気に入っているんだ。海人には勿体ないと思っているよ。また捨てられなくて良かった」 「おじさん、何気に良い人?」  由真のストレートな素直さに、空嗣は声を上げて笑った。 「すぐに人を信じたらダメだよ。甘い言葉で騙す詐欺師も多いからね」 「おじさん、笑ったら海人君に似てる」 「違うよ。海人が僕に似ているの。由真ちゃんも菫ちゃんと目元が似ているね」  空嗣がそう言うと、由真が小さく息を呑み込んだ。  そして困ったように、はにかみながら嬉しそうに笑う。 「そう? 初めて言われたな。そんなこと。でも嬉しい。おじさん、ありがとう」
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