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「お宅に? でも、まだ、その結婚は……」
海人との結婚に戸惑っている菫は頷くことに躊躇した。
そして、何より熊井家には菫を嫌っている由紀子がいる。そう思うだけで、行く気は起きなかった。
「菫ちゃんは、まだ海人との復縁を迷っているみたいだね。それに、熊井家に顔を出すのもためらっている。由紀子は最初から菫ちゃんに冷たく当たっていたから。海人もあれから一度も実家に帰って来なくて。由紀子が落ち込んでしまって見ていられないんだ。海人は連絡も拒否しているから、どうしようもなくて」
申し訳なさそうな空嗣に、菫は黙り込む。
菫が海人と結婚している間も、由紀子は菫を毛嫌いしていた。その態度を隠す訳でもなく目に見える形で示していた。
その度に菫は傷つき、そして海人と空嗣は菫を庇う。それが由紀子を更に怒らせてしまい悪循環が生まれていた。
「あの、申し訳ないのですがお断りしたいです。あまり良い思い出がないので……」
曖昧にしておくよりは、きっぱりと断った方が良いだろうと菫は空嗣を見る。
すると、空嗣は菫の答えがわかっていたかのように頷いた。
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