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怖い物知らずの由真がここぞとばかりに声を張り上げた。
「颯から聞いています。菫さんこれからよろしくね。今度、私達の家にも遊びに来て。結婚しても仕事を続けるから病院の近くに家を買ったの。由真ちゃんもぜひね」
「行きたい! 今度、三人で行く」
無邪気な由真は菫にも同意を得ずに、勝手に菜摘から約束をとり付けていく。だが、菫は目の前にいる由紀子が怖かった。
例えるなら般若。そんな言葉がぴったりなほど由紀子は怒っている。
「……颯。私達と同居はしないの? そう言う約束だったでしょ? 息子と同居するのを楽しみにしていたのよ」
厳しい怒りを抑えた声色に、途端に由真も菜摘も静かになった。
問いかけられた颯はと言うと、動揺する様子もない。
「そんな約束していないだろ? 父さんも別に一緒に住まなくても良いって言っていたけど? それ、亜沙美ちゃんと夢見た母さんの妄想だから」
空気が凍った。
「颯、それは言いすぎだよ」
菜摘がフォローを入れるが、もう遅い。
「本当のことだろ? 亜沙美ちゃんにそそのかされたせいで、海人には嫌われて菫ちゃんには怖がられる。自業自得だよ」
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