第二章〜空虚から〜

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 月屋さんは僕の服をはだけさせて、心臓のあるところを晒した。  棒状の───名前は忘れてしまったのだけど───ものを胸元に当てた。先端にはジェル状のものがある。ヒンヤリとした感覚が伝わり思わず身を縮めた。 「ごめんね動かないでね」  月屋さんが片手で制しながらどんどんそれを当てていく。  ぼんやり天井を眺めていると、子供に人気なキャラクターの絵が貼ってあった。幼稚園の頃好きだったアニメ。パンの顔をしたヒーローが町を守るストーリーだったはずだ。  天井のそれは小さい子にはいいだろうけど、僕にとってはなんの気を紛らわす材料にもならなかった。宇宙の写真のほうが星座を探したりできて楽しいのに。  実は、中学校の時と、高校───高一の三学期の途中までしか行けなかったけど───天文部だったのだ。  右側向いてね、などと言われ姿勢を何度も変えた。  その度に少し胸が苦しかったけれどなんとかやり過ごした。 「はい、終わり。お疲れ様」  小一時間ほど経つとようやく開放された。  起き上がろうとした瞬間。 「うっ……!」  心臓を雷が貫いたような痛みが走った。  さっきとは比べものにならない痛さ。──発作だ。 「───っ!」  はぁはぁと荒い呼吸をする。  息が、苦しい……涙がボロボロとこぼれてきた。  月屋さんが背中を擦りながら尋ねてきた。 「律くん、大丈夫? お薬ポッケかな?」  なんとか頷くと月屋さんは「誰か水持ってきて!」とスタッフがいるであろう方向に声を張り上げながら僕の入院着のポッケを探った。
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