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数秒後、検査室に入ってきた看護師がコップを片手に走ってきた。
「大丈夫!? 月屋さん、はい!」
「ありがとう! 律くん、落ち着いて飲んで」
震える手にカプセルを二個渡された。そして水。
荒く息を吐きながらなんとか口まで運ぶ。
「っ、ぅ……」
言葉にならない声を上げながらやっとのことで飲み込んだ。
はぁはぁと息を荒げていると優しく背中を再びさすられた。
苦しい、辛い、そして情けない────涙が、抑えられない。泣いたら余計苦しいのに。
*
───やっと落ち着いた。
発作でものすごく体力を使った。どっと疲れが押し寄せまぶたがしょぼしょぼとしてくる。
「落ち着いた?」
「……は、はい……」
「本当は西尾先生、お母さんと律くんに結果話したかったみたいけど……今日はやめておこうか。お母さんに電話しておくから」
「……よろしくお願いします」
喋るのも怠い。目を瞑って微睡んでいると月屋さんたちは何やら話している。
「堺くん、律くんを病室まで連れてってくれる? 確か、805号室だから」
「分かりました」
「律くん、ストレッチャーと車椅子どっちがいい? ……そうだな、車椅子だったら一回、ストレッチャーだったら二回僕の手を握ってくれる?」
暖かい手を二回そっと握った。
疲れて苦しく、座る自信がこれっぽちもない。
「オッケー。ストレッチャーね」
「あ、ストレッチャー持ってきますね」
「ありがとう」
「──律くんちょっと失礼」
彼はベットで横になっている僕の背中を起こした。ゴツゴツとした手の感触が細くなった背中から感じる。
「せーのっ」
月屋さんは僕の足を、看護師の堺さんは腕を後ろから持ち上げた。
浮いた、と思うと同時に優しくストレッチャーに移された。
惨めだ……自分でこんな事もできないなんて……
まぶたの裏に雫が弾けた。
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