第二章〜空虚から〜

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 数秒後、検査室に入ってきた看護師がコップを片手に走ってきた。 「大丈夫!? 月屋さん、はい!」 「ありがとう! 律くん、落ち着いて飲んで」  震える手にカプセルを二個渡された。そして水。  荒く息を吐きながらなんとか口まで運ぶ。 「っ、ぅ……」  言葉にならない声を上げながらやっとのことで飲み込んだ。  はぁはぁと息を荒げていると優しく背中を再びさすられた。  苦しい、辛い、そして情けない────涙が、抑えられない。泣いたら余計苦しいのに。 *  ───やっと落ち着いた。  発作でものすごく体力を使った。どっと疲れが押し寄せまぶたがしょぼしょぼとしてくる。 「落ち着いた?」 「……は、はい……」 「本当は西尾先生、お母さんと律くんに結果話したかったみたいけど……今日はやめておこうか。お母さんに電話しておくから」 「……よろしくお願いします」  喋るのも怠い。目を瞑って微睡んでいると月屋さんたちは何やら話している。 「(さかい)くん、律くんを病室まで連れてってくれる? 確か、805号室だから」 「分かりました」 「律くん、ストレッチャーと車椅子どっちがいい? ……そうだな、車椅子だったら一回、ストレッチャーだったら二回僕の手を握ってくれる?」  暖かい手を二回そっと握った。  疲れて苦しく、座る自信がこれっぽちもない。 「オッケー。ストレッチャーね」 「あ、ストレッチャー持ってきますね」 「ありがとう」 「──律くんちょっと失礼」  彼はベットで横になっている僕の背中を起こした。ゴツゴツとした手の感触が細くなった背中から感じる。 「せーのっ」  月屋さんは僕の足を、看護師の堺さんは腕を後ろから持ち上げた。  浮いた、と思うと同時に優しくストレッチャーに移された。  惨めだ……自分でこんな事もできないなんて……  まぶたの裏に雫が弾けた。
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