第二章〜空虚から〜

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 * 「じゃあゆっくりしててね。何かあったらナースコール押して」  病室に戻り、堺さんは新しい点滴を刺し、ナースコールを僕の手に握らせた。  カーテンは閉じない。さっき発作があったから急変してもおかしくない。  その時、すぐに対処出来るようにカーテンは開けっぱなしにするようだ。  堺さんが去っていくと沈黙が訪れた。  目蓋が重い。彼女の部屋に遊びに行こうと思ったけどだるいし、今の自分では歩いて行けるかが不安だ。歩けない。自由がない。それが僕を苦しめていた。  心の中で謝りながらそっと目を閉じた。  *  一面に菜の花畑が広がっていた。今は秋だというのに。  妙に身体が軽い。右腕を見ると点滴がない。カテーテルもない。体が軽い。  そっと歩く。不思議と全然しんどくない。病気になる前と同じだ。  嬉しくて走る。 「あはははは!」  身体全体で喜びを現しながら走る。 「律」  後ろから声がして振り向くと彼女が寂しそうに笑った。 「───っ?」  思わず彼女の名前を口走ると彼女は嫌そうに顔をしかめた。 「……もう、律といると辛い……律、病気、治ったんでしょ……バイバイ」  彼女は電動車椅子のレバーを倒した。  驚く程速いスピードで駆け抜けていく。 「待って!」  思わず叫ぶ。でも、彼女の姿はどんどん小さくなり、消えていった。  ねぇ、待ってよ……
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