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「ふぅ……」
なんとか───半分食べた。
食は細くない方だったけど、病気に蝕まれてから確実に食欲は減っていった。
半分も食べれば薬を飲んでもいいだろう。纏めて十錠は流石に無理だから一度につき三錠。最後は四錠ではなく、三錠と一錠に分ける。四錠以上はつっかえてしまう。
「律ー」
不意にドアが開いて、彼女が車椅子に乗ってはいってきた。
同室の───確か小学生だ───彼が驚いたように食事のトレーから彼女に目を向ける。
「あ、───お姉ちゃん」
「結城くん久しぶり」
彼女は彼───結城くんに手を振って「お邪魔します」と笑った。
結城くんは照れたように笑って頷くとカーテンを閉める。
「あ、すみません」
僕は頭を彼女に下げた。
「部屋、行けませんでした」
「別にいいのよ」
彼女は車椅子で僕の枕元に来て首を傾げた。
「謝ることじゃないし───私も悪かったし。無理強いはしない」
「でも……」
彼女はニカっと笑った。
「この話はもうおしまい。それより律に聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
「律って今フリー?」
「え?」
「付き合ってる人、いるの?」
「えっ!? まぁ、居ないけど……なんで?」
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