第二章〜空虚から〜

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「……うん」  うん、としか言えない自分に不甲斐なさを感じながら小さくうなずいた。  そして一瞬遅れてどきりとした。  なんで生きてるのか───ずっと目を逸らし続けたこと。  友達も少なくて口下手で成績は中の下。つまらなくて、ありきたりで、それでいて最期が“普通”より、早く苦しい。 「いくら考えても思いつかなかったの。幼稚園は一年と少ししか行けずに入院生活。小学校は合わせて半年も行ってないし、中学は義務教育だから入学したけど、一回も行ってない。高校に至っては受験もしてない。院内学級には行ってるけどね。  自由なんてないし、ずっとベットが友達状態。チューブを取り付けられ、何度も身体を切って……これだよ。  あと半年。もう、緩和ケアしか出来ない。なのに家には帰れない。いつ急変するかも何も分からない。半年って言われてるけど、建前で明日かもしれないし、一分後かもしれない。なんも出来ない、自由がない人生な訳」  彼女はしゃべり疲れたのかふうーと息を吐いた。ダイヤルを捻って、何かをした。───おそらく、酸素濃度を上げた。出会った時はなぜか気がつかなかったけど、彼女は酸素チューブをしていた。  それが彼女の生きる困難さを示しているようで、僕はそっと目を伏せた。 「それでね、やりたいことを今からやりたいわけ」
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