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彼女は落ち着いた呼吸と寂しそうな笑顔で続けた。
「友達なんて病院以外いない。学校にたまに行っても孤立してたし。当たり前だけどね。ずっと行っていなかったのだから。
入院友達なんて一過性に過ぎない。私、一番の古株なんだけど、みんなは居なくなって行く。笑顔の別れも悲しい別れも。同じ歳の人も少なくなる。
それでね、まぁ普通に考えて友達と普通に過ごしたいの。でも、後半年だから欲張りたくて、彼氏が欲しい。彼氏とデートしたりって、やってみたい」
「……うん」
話がすごいところへ行ったぞ、と僕は小さく眉を寄せた。
自惚れるわけではないけど、変な予感がする。
息苦しさを感じ深く深呼吸をしたが逆効果で苦しくなってきた。
「はぁっ……はぁっ……!」
「律、大丈夫!?」
「はぁっ……うん……つっ!」
鋭い痛みが胸を貫き悶える。
結城くんが異変に気づいたのかカーテンを開けた。
「先生呼ぶ?」
ナースコースを押そうとする彼女の手を必死で押さえた。
今先生が来たらこの話は宙ぶらりんで、そして一生聞けなくなる気がしたから───
「よ……いで」
「ん?」
「呼ばないで……はぁっ……大丈夫だから……」
僕は震える手で薬を取り出して、ベットサイドにある水で薬を流し込んだ。
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