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翌日───
僕が単純なのかわからないけれど、目覚めはここ最近一番よく、起き上がるのもスムーズだった。
この前なんて起き上がった瞬間に発作が起きたというのに。
「おはよう」
僕や結城くんなどを中心的に見てくれる看護師の早乙女悠真さんが入ってきた。
入院するまで看護師は女性が多いイメージだったけど、それは古臭い考えでこの病院は男女比が半々くらいだ。看護婦さん、などと呼ぶのはもう何年も前の事だろう。
「お、律くん今日調子良さそうだね」
「うん」
「何かあった?」
血液を採取する準備をしながら早乙女さんは尋ねた。
トレー上に注射器などが陳列している。
「律兄ちゃん、お姉ちゃんに告られられたんだよ!」
言うか言わまいか躊躇っていると、結城くんが嬉々として早乙女さんに言った。
「結城くん……」
思わず額に手を当てる。
「エヘヘ」
「え、お姉ちゃんって遠藤ちゃん?」
「うん! 僕ねぇ告る瞬間目撃したよ!」
「そーかそーか。で、律くんはなんて答えたんだい?」
「……言ってない」
言われた瞬間気がついた。
あの時わちゃわちゃしすぎて、返事をするのを忘れていた。
早乙女さんは二、三度目をパチクリさせると、手を止めた。
「えぇ!? 返事してあげなよー、早めにね。俺、前に告られた時1週間待ってって言ったらソッコーフラれたもん。そっから一回も告られたことないよ……」
早乙女さんは苦虫を噛み潰したような顔になった。
「俺だって……彼女欲しいし……後悔してるし……な……?」
「分かった」
僕は少し緊張しながらうなずいた。
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