第三章〜桃色〜

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 早乙女さんは「ファイト」と笑って駆血帯(くけつたい)を取り出して僕の腕に巻いた。これは静脈血を採取しやすくするためのゴム状のものだ。  早乙女さんは「行くよ」と言うなり針を刺した。もう、半年以上繰り返しているけれど未だに苦手だ。  グッと目を瞑る。幸い、僕の場合まだ血管が見やすい方だから何度のやり直しにはならない。  何分にも感じる時間が終わると早乙女さんはスピッツと言う容器ににすぐ入れ直した。刺したところをガーゼで押さえながら「律くん抑えててね」と言い手を離した。  僕がぐっと押さえつけていると早乙女さんは血圧を測る準備を始めた。 「まだ抑えててね」  早乙女さんはそう言うなり立ち上がり結城くんのもとに行って血液を採取し出した。  結城くんは「律兄ちゃん怖いのかよ、僕怖くないぜ!」とか息巻いていたのに泣きそうな顔になっていたのだけど。  約三分後、「とっていいよ」と言う早乙女さんの合図に合わせて恐る恐る取る。無論、血は止まっていた。 「そんな恐る恐るやらなくていいのに」  苦笑しながら早乙女さんはガーゼを回収し、袋状のベルト──カフを巻き付けた。 「血が飛び出そうで怖いんだよね」 「そっか、じゃ、測るよ」  スイッチと共にカフが僕の腕を締め付ける。痛くはないけど、地味に苦手だ。締め付けられている感覚に違和感を覚える。その後、熱を測る。  ここまでが大体朝している検査だ。 「よし、熱は問題無し! 今日は心電図と胸部のX線検査、それとリハビリがあるから忘れないで。後、西尾(にしお)先生に聞いたんだけど……院内学級行ってないんだって? 体調もあるだろうけど、リフレッシュになるから行ったほうがいいよ」
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