第三章〜桃色〜

4/15
前へ
/198ページ
次へ
 西尾先生───僕の担当医だ。  彼らが言ったように、院内学級はずっと行っていない。夏休み前、高校を退学すると同時に何かがポッキリと折れ、行かなくなった。どうせ、持たない命だ、勉強しても時間の無駄だ───いつしか、そう考えるようになった。 「……うん」 「行きなよ、無駄かもしれないけど……何かが変わるかもしれない───遠藤ちゃんも体調がいい日は行っているよ」 「……分かった」  後者の誘惑にあっさりと負けた。早乙女さんはニッと口角を上げ、薬を渡して来た。 *  早乙女さんが行った後も、告白の返事を考えていた。  名明るくて天真爛漫。焦ると早口になってたくさん話す。これだけなら普通の女子高生と変わりない。名前が嫌い、と言う点でも普通、なのかも知れない。  ただ、難病を抱え、僕と同じ余命半年。  どうしようもなく、悲しく、どこか美しい確固たる運命の繋がりを抱えて出会った僕ら。  僕はそんな運命に、彼女にたったの一日で息もできないほど惹かれていた。  もっと、彼女の笑顔を、声を、仕草を、生を────もっと感じて、残り限られた時間を過ごしたい。  こんなこと考えなくても分かっている。  ───僕は彼女が好きなんだ。  告白の返事に『NO』なんて存在しない。  『YES』以外何があると言うんだ。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加