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「最悪じゃん。あ、でも私なんて年長さんの時に言われたよ」
「え?」
思わず聞き返すと彼女は急に甲高い声になって言った。
「あなたはね、原因不明の難病なのよ。症例が少なくていつ、死んじゃうかが分からないのよ。唯一言えるのは大学生になれないって言うことよ、それまでに天国に行っちゃうの。悲しいね、あぁ、なんてかわいそうな私の娘ちゃん……って」
『って』を地声に戻しクスリと笑った。
どうやらさっきの声は彼女の母親の真似らしい。
「親が勝手に悲観しているだけ。『かわいそう』とか言ってるけど、その行動があっている気がしないし、そばにも居ない。私のそばにいると辛いんだって」
「そっか……」
「サイテーだよね」
彼女はひらべったく笑った。
「君の母親は僕のとこと似てるな」
「だよね」
「親って分からないなぁ……よく、親になったら分かるっていうけど親になる前に死ぬし」
「それ、分かる」
「でしょ? と、言うか話それてるけど……律なんで来たの?」
愚痴を言っていたら思わず忘れていた。──本来の目的を。
「笑わないで?」
「うん」
彼女は神妙な顔でうなずいた。
「僕、君が好きだ───付き合ってください」
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