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僕の初めての、そしておそらく最後の告白はあまりにありきたりで、ボキャブラリーのカケラもない幼稚園生のようなものだった。
恥ずかしさのあまり、ギュッと目を瞑る。
数秒後笑い声が聞こえた。馬鹿にしているように感じない。おずおずと目を開ける。彼女は本当に嬉しそうに笑っていた。
「いいの? 本当に律の気持ち?」
「うん」
「昨日の、本当に答えてくれたんだぁ……嬉しい。ありがとう」
彼女はクシャッと笑みを浮かべた。
「いいの?」
「うん、と言うか私が告ったのに」
「昨日のは冗談だって言われて、ふられるかもと思った」
「冗談なんて言わないよ。後少ししか生きれないのに、騙したって意味ないし」
「そうだね」
「じゃあ……付き合おう」
彼女の宣言はあまりにも幼稚だった。
だが、それが僕を心地よくし頬を自然に緩ますことが出来た。
「恥ずかしいよぉ……」
彼女は頬を真っ赤にして掛け布団をかぶった。
そんな彼女があまりに愛おしくて僕は手を彼女のおでこに当てた。
「何するのー」
「熱はないね」
「当たり前でしょ! 恥ずかしいもん……」
「あははははっ!」
頬を膨らませ唇を尖らす仕草は子供のようだった。思わず笑ってしまったが、一瞬遅れて苦いものが胸に残った。
ろくに社会経験をしていない彼女は、いくら院内学級に行っているとは言え、普通の女子高生と比較すると精神的に幼いのだ。
そのことが彼女の人生を象徴しているようで、僕の胸はこんなにも苦しい。
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