第三章〜桃色〜

10/15
前へ
/198ページ
次へ
 澄川さんと病室に戻り、朝ごはんをもらう。朝はパンかご飯か選べる。僕はご飯派だからご飯を貰った。と、いってもふりかけは申し訳ない程度にしかかかっていない味気ないものなんだけど。おかずは蒸し野菜とササミだ。  彼女に告白したテンションからか、さっき発作を起こしそうになったのに、あっさりと全て完食することができた。 「お、食べたね! 偉い!」  完食して暫くすると澄川さんが回収に来た。 「お薬飲んだ?」 「はい」 「オッケー。あとで西尾先生が診察に来るから」 「はい」 「じゃあね」  澄川さんは穏やかに微笑むと結城くんの元へ向かった。 * 「律くん入るよ」  澄川さんが去っていって五分ほど経つと、主治医の西尾先生と早乙女さんがが入ってきた。 「心臓の音聞くね」  西尾先生が服をぺらっとめくり聴診器を胸に当てた。ひんやりとした感覚。   何度やっても慣れない。無言の時間が過ぎる。  西尾先生は時折眉を上げていた。その度、また僕の身体は変なのか、と考え、死の近さを実感し、少し感傷的な気分に浸った。 「息吸って止めて……はい、吐いて」  指示に従い、三分ほどで解放された。 「最後に、輸血しようね。ちょっと今日数値が低いから」  西尾先生がそういうと同時に早乙女さんが廊下に向かい、輸血パックを持ってきた。所謂真っ赤な血ではなく、マンゴージュースのようなものだ。なんでも中身は血小板らしい。 「体調悪くなったらナースコールしてね。まぁ、はじめは拒否反応ないか数分近くにいるけどね。終わった頃に来るから。体調良かったら院内学級行ってご覧。昼ご飯食べたら、検査とリハビリね。リハビリも今日は行けたらでいいよ」 「分かりました」  他人の血液を異物だと攻撃する恐れがあるのだろうか。いつも輸血の際は数分誰かが近くにいる。  数分後、特に拒絶反応もなかったので早乙女さんは去って行った。
/198ページ

最初のコメントを投稿しよう!

90人が本棚に入れています
本棚に追加