90人が本棚に入れています
本棚に追加
/198ページ
翌日もいつも通りだった。
七時に目覚ましが鳴り、顔を洗ってあまり味のしない朝食を食べる。味のしない原因は、病院食かそれとも……僕は頭を振って馬鹿な考えをしたと箸を握り直した。
食欲はイマイチだ。体調があまりすぐれないから、再びベットで横になっていると、看護師がやって来た。名前は……なんだっけな。まぁ、覚えたって意味がない。どうせ、死ぬんだから。
「薬飲んでね。体調はどう?」
薬とコップを差し出されてゴクリと飲む。繰り返すこと三回。いまだにどれが何の薬かキチンと分かっていないし、それらを飲んで余命が伸びるわけでもない。
でも、飲む。工場のベルトコンベアに乗っているようなものだ。口腔内に微かに残る苦味に少し顔をしかめた。
「起き上がるのも怠いです」
喋るのも全てがだるい。ズブズブとマットレスに沈み込んでしまいたい。
そしてずっと目を覚まさないでいたい。
「オッケー、熱測ってね」
体温計を渡されて脇に差し込む。
何が「オッケー」なんだ。出来ることは少ないのに。
ぼうっと体温を測っていると、看護師は手早く点滴の準備をしていた。
ピピっと短く音が鳴り、差し出す。意外にもそして珍しく平熱だ。と、言っても高めなのだけど。解熱剤を使うほどではないから、まぁいいや。熱が出ても、どうでもいい。
看護師はメモに記録して、カテーテルに点滴を繋げた。
「何かあったらナースコールしてね」
看護師が去っていくと再び静けさが戻って来た。同じ部屋の患者は朝から検査なのか姿を消している。
「今日の予定は……」
首だけサイドテーブルに向け、カレンダーを見ると『10時 心エコー@Kー1』と書かれていた。
この病院はかなり大きく、待合室がA〜Zまであり、細かく細分化されておる。
それまでは暇だから再び眠りにつくことにした。
最初のコメントを投稿しよう!