青い優越感

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 高校3年生、受験前。  毎日毎日、勉強の日々。 「ねえ、飲み物買い行こう?」 「しょうがないなあ」  小声で彼を誘い出す。校舎裏の自販機で、放課後のちょっとしたコーヒータイム。 「今日もごちそうさまでーす」 「ほぼ毎日奢ってやってるんだけど見返りがこねえ」  少し静まりかえった夜の校舎。21時までは自習できる、進学校。二人で買いに行って戻るまでの少しの散歩は、ちょうどいい勉強の息抜きになっていた。 「好意だと思っていましたー、見返りはありませーん」 「はあ、じゃあ帰ったら明日の古典の訳教えて」  スクールカースト中くらいの私と、 「いいよ、まじで文系いけばよかったレベルだからね」 「理学部志望のくせに物理だめだめだもんな」 「うっさい」  スクールカースト上位に気に入られている彼。 「そういえば、まだ付き合ってんの?あいつと」 「え、だから付き合ってないってば。でも今度二人で遊び行くよ」  またかよ、そう吐き捨てる。他の子にはとても愛想がいいのに私にはいつもぶっきらぼうだった。 「いいようにされそう、お前」 「うーん、まあそうかもね」  好きの先に何があるのかよくわかっていなかった私に、その意味はさっぱりだったけど、  彼が知っていることをわからないと言うことが悔しくて、いつも適当に話を合わせていた。 「好きなんだな、ほんとに。俺にはわかんねえ」  彼は首を傾げた。 「どうせ捨てられるぜ?付き合ってもないくせに」 「そうかなあ」  やっぱり好きだ、彼を見上げて私は思った。  こんなにも朗らかで締め付けられるような気持ちになるのは、彼の隣にいるときだけだ。明るくて誰にでも好かれていて、でも本当はちょっぴり腹黒い。  知っているのはたぶん、私だけ。 「もし捨てられたらさ、拾ってよ」  あいつのことが好き? そんなわけないじゃない。今度のデートなんて、誘われたから行くだけなのに。 「じゃあさ、」  3年かけて、彼の理解者という立場を一生懸命つくってきた。気付かれたら”終わり”と考えていた。 「なに?」  でも、素直になればよかった。
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