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 受け取ろうと掛けた手に、まだケースにかかる力を感じて、私は彼女の顔を見た。  「……それで、他には何か言ってた?」  「ううん、別に。絵里、なんか変だよ。どうかした?」  「ごめん、私……」  俯くように逸された顔に、先ほどまでいつもの調子で接していたことを後悔する。  絵里と重なっている指先が、冷たい。  「私、千代李が教室にこなくなる前の日、2人で話して、それで言い合いになって……」  「言い合い?どんな風に?」  「部活のこと、塾に行くから週に3日くらい出れなくなるかもって千代李に言われて、それで、なんかカッとなっちゃって」  震える声に、返す言葉が見つからない。  そっかと、曖昧な相槌を返すのが精一杯で、後は唇を噛むことしか出来なかった。  そんな私を、頼りないと思っているだろうか。  彼女の表情を伺いたくても、俯いた影が邪魔して、それは叶わない。  「都内の私立の高校を受験するんだって、親もそこにいって有名な大学に入ったからって、でもそれで部活休むって、こっちは大事じゃないって言われてるみたいで……」  スカートの生地に、涙が染み込んでシミができている。
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