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弱々しい彼女の姿を、見ていたくない。
音楽室の大太鼓は、練習をやめてしまったのか、いつの間にか、メトロノームの音だけが取り残されていた。
「……ごめん、何も知らなくて」
「ううん、いいの。それに、進路はみんな違うからしょうがないし、千代李はそんな風に思う子じゃないってわかってるんだけど、きつく言っちゃって、それで私」
そこまで話して、絵里は口元を手で覆う。
「私のせいで」
こもった声には、泣きじゃくる彼女の吐息が混じっている。
支えられていた半分の力を失って傾いた楽器ケースから、滑り落ちたスケッチブックが床に叩きつけられた。
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