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 風で飛ばされてしまわないように、私はトレーの上に置かれた細いストローを、端に寄せて親指で押さえた。  廊下の突き当たりまでたどり着き、「相談室」というプレートがかけられたドアと向き合う。  トレーを片手で支えながらノックすると、中で椅子を引く音が聞こえた気がした。  「給食持ってきたよ」  声を掛けると、こちらの様子を気にするようにドアがゆっくりと開く。  「あ、一叶(いちか)。わざわざありがとうね」  ようやく顔を覗かせた千代李(ちより)は、申し訳なさそうに微笑んだ。 「ぜんぜん、給食前の散歩って感じ」 「散歩?何それ、おかしい」  ふふっと、桜色の小さな唇が笑う。  意外と元気そうで、いつも通り彼女に安心して、私は給食のトレーを手渡した。  「千代李は、カレー冷まして食べる派?」  「え?どうして?」  「いや、急いできたんだけど廊下寒いし、冷めたかもって思って」  「そっか、大丈夫だよ。本当にありがとうね」  それじゃあと、中に戻ろうとした千代李とまだ話したくて、彼女が体で支えていたドアを足で止める。
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