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「あのさ、教室で食べないの?」
「……うん、今日はやめとくよ」
「そっか、わかった」
歯切れの悪い返事をする千代李を、強引には誘えない。
仕方なく会話を終えると、放送のスピーカーから、モーツァルトの英雄ポロネーズが流れた。
「12時35分、お昼の放送です」
時刻を伝えた放送委員の挨拶で、昼の放送が始まる。
「それじゃあ、また明日ね」
軽く手を上げて、別れを告げる。
「うん、またね」
千代李が、ドアを閉めるのを見届けてから、私は元来た廊下を一人で戻る。
彼女が教室からいなくなって変わったことは、私が彼女の給食を運ぶ係になったことくらいだ。
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