✳︎✳︎

3/3
前へ
/14ページ
次へ
 「あのさ、教室で食べないの?」  「……うん、今日はやめとくよ」  「そっか、わかった」  歯切れの悪い返事をする千代李を、強引には誘えない。  仕方なく会話を終えると、放送のスピーカーから、モーツァルトの英雄ポロネーズが流れた。  「12時35分、お昼の放送です」  時刻を伝えた放送委員の挨拶で、昼の放送が始まる。  「それじゃあ、また明日ね」  軽く手を上げて、別れを告げる。  「うん、またね」  千代李が、ドアを閉めるのを見届けてから、私は元来た廊下を一人で戻る。  彼女が教室からいなくなって変わったことは、私が彼女の給食を運ぶ係になったことくらいだ。
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加