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「絵里は、何か知らない?何かで悩んでたとか」
「こっちは特に何も、一叶も聞いてないんだよね」
「うん、私も特に聞いてないよ」
千代李とは、中学1年生の時、出席番号が近かったことをきっかけに友達になった。
それからは、3年間同じクラスで、いつも一緒に過ごしていたが、こんなことはもちろん初めてで、いつでも愛想がよく、愚痴を言っているのも聞いたことがないくらいの彼女が、何か悩みを抱えているとか、塞ぎ込んでいるとか、そのような検討は、私には思いつかなかった。
「まぁ、今度会ったらさ、部活だけでもいいから、これそうなら来てって言っておいて」
返事を待たないで前を向き直った絵里が、楽譜をなぞるようにしてハミングを歌い出だす。
本人から、部活の話を聞いたことはあまりないけれど、部長の絵里とは仲が良いと話していた気がする。
実際に、今年は同じクラスになって、自然と2人で過ごしていた私と千代李に、絵里を加えた3人グループになったのだから、彼女が誘っていたと言えば、行きたくなるかも知れない。
そう考えながら、忘れ物がないか机の中を探る。
その手にぶつかったのか、ふいに飛び出てきたハート型に折られた折り紙が、膝の上に落ちた。
ハートの中心には「今週の日曜日、空いてる?」」と、角のない小さな文字が書かれていて、千代李の文字だとすぐにわかる。
「そっか、これだ!」
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