むうびい

2/3
前へ
/3ページ
次へ
 わかんない。ただ、ママに言わせると、最近パパはお仕事が忙しすぎるんだって。ぼくが寝てしまってから帰って来ることも多いし、土曜日や日曜日もお仕事だって言って出かけていってしまうんだ。  この間のぼくの誕生日だってね。パパ、絶対に早くお仕事から戻るって言っていたんだよ。でも、夜になっても全然帰って来てくれなくって、ママが携帯に電話してもつながらなくって……哀しくって、ぼく、ケーキもろくに食べずに寝ちゃったんだ。  そしたら、パパ、次の日はびっくりするぐらい早く帰ってきて、それで、そのクマちゃんを一日遅れのプレゼントって、渡してくれたんだ。ママは「そんなぬいぐるみでごまかして」って怒っていたけど。 (そうなんだ。このもふもふのクマちゃん、パパはどこで買ったのかしら?)  パパの会社の隣のデパートだって言っていたよ。ぼくの家の近くのデパートじゃ、すぐに売り切れちゃったけど、たまたま仕事帰りに立ち寄ったら、まだ一つだけ残っていたんだって。 (そっか。龍太郎くんの誕生日って、バレンタインだったものね。……あのね、龍太郎くん。実はね、先生もこのクマちゃんと同じぬいぐるみを買っていたんだよ。大きさも色もまるで同じ。このクマちゃん、耳の端っこがちょっとひきつれているけど、そんなところまで同じクマちゃんだったんだ)  えっ、本当に。じゃあ今度、せんせのクマちゃんとぼくのクマちゃんと、一緒に遊ぼうよ。 (うーん、それは難しいかなあ)  どーして? ぼく、せんせのクマちゃん、見てみたいなあ。それで一緒に今日みたいに、もも組のみんなには内緒でお出かけしようよ。 (そうだね。そうできればステキなんだけど、実は先生のクマちゃんは、もう先生のところにはいないんだ。先生の好きな人がね、先生よりもっともっと大切な人にあげたいって言って、無理やり先生のおうちから持って行っちゃったんだ)
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加