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改札を出て、階段に向かう道で、君が待っていた。
「遅いから車止めてきちゃった」
拗ねたふりをして僕の腕を小突く。そうしてもう一度、おかえりと言って泣きそうに微笑んだ。
「ただいま」
ひと言告げると、それはもうとびきりの笑顔を僕にくれた。
車に行くまでの短い時間だけど、君は当たり前に手を繋ぐ。それを僕がそっと握りかえす。
こんな些細なことで、僕の胸はいっぱいになるのだ。
外はすっかり夕暮れで、夕陽を浴びて僕たちは晩御飯の話をした。
これからは二人で生きていく、左手の薬指にはその証がある。
「今日はオムライスがいいかな」
いいね、と微笑む君だけで、
僕はもう十分だ。
完
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