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腹ペコ坊主、悩む。
自分の自慰の回数がもしかしたらおかしいんじゃないだろうか、と隆寛が気が付いたのは二十歳を超えたくらいから。
「高校生の時はさ、毎日してたよなあ」
「そうそう、ひどい時は日に三回とか!飯の回数かよ!」
僧侶になる前、同じ大学で学んだ友人たちと飲んでいてそんな話が出た時。夜も更けると僧侶といえついついこの手の話が出てしまうのは致し方ない。
ただ、坊主頭三人が集まって居酒屋ではしゃぐ訳にもいかず、大抵は誰かの家に行く。
そこで聞いたのが『現在の自慰の回数』だった。二人はせいぜい週二回くらいで、法要などが重なった時は全く一週間ナシということもあるという。
「なあ、隆寛はどれくらい?お前性欲薄そうだもんなあ」
自分に話が振られて、思わず同じくらいかなあと話を合わせてしまった。
(毎日、抜かないと疼くなんて言える訳ない…)
二十五歳を超えても一向に回数は減らない。いっそ我慢してみるか、と思って実行してみたものの、結局トイレで抜くはめに。情けなさ過ぎて泣けてしまった。その一件があってからは毎日朝、必ず抜いてから朝のお勤めに行くようにしている。
こんなこと檀家に知られたらもう二度と読経も出来ない。
「はー…」
その日は朝から法要が続くというのにうっかり寝坊をするという失態を犯してしまった。
どうにか法要に間に合い、涼しい顔をして読経したものの、法要が済んだ後ふらふらとする隆寛に檀家のおばさまたちが心配そうに声をかけてきた。
「お寺さん、大丈夫かね?顔が赤いけど……」
「だ、大丈夫です!気になさらず!お帰りも気をつけてくださいね」
慌ててそう言いながらそそくさと寺を後にした。
その後電車で帰宅中に、どうにも疼いてしまい、駅のベンチでうずくまっていた隆寛。
「隆寛さん、大丈夫?」
そう声をかけられて顔をあげた時、そこにいたのは数日前に知り合った正嗣だった。
ぽろっと出た言葉に正嗣が反応して、まさかまさかの展開。そして自慰なんて目じゃないほどの快楽を知ってしまった。
それから毎日、とはいかないが会えば必ず体を合わせていた。
「とんだエロ坊主だな」
もう何度、言われただろう。それを反論できない隆寛。正嗣にしがみついて自ら腰をうねらせてしまう。それを見てまた正嗣もその誘いにのってしまう。
気が付いたら、もう何回イってしまったか覚えてないくらい。
(高校生かよ……)
まるでセックスを知った高校生が見境もなくやってしまうようなことを二十八歳の二人がやっているなんて。しかもこんな職業の自分がこんなに淫乱だなんて。
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