セイコウキンキビ

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セイコウキンキビ

古くからの言い伝えというものは、安易に無視することはできない。警告だったり、思想だったり学ぶべきことがたくさんあるのだ。 だか、しかし。この言い伝えだけは腑に落ちない。 隆寛はため息をつく。 五月十六日。この日は「性交禁忌日(せいこうきんきび)」である。 江戸時代あたりから伝わる「性交禁忌日」。この日に性交すると、三年以内に死んでしまうという言い伝えがある。陰陽思想の往亡日。「物事を行うべきでは無い日」にあたることからこのような考えになったようだ。本気にするわけではないが、何となく気持ち悪い。 「無理でしょ、シないなんて」 一緒に住む正嗣にキッパリと言われて隆寛は、思わず笑ってしまった。 同棲するようなって、ほぼ毎日シている。ただ、朝早くに法要の予定がある時は回数を一回にセーブしている。昨日の夜なんか、四回してしまってさすがにぐったりしていた。 今日のようにベッドの中でまったりする朝は貴重で、正嗣は隆寛に頬擦りしてくる。 「うーん、でも…」 「無理だって」 正嗣の手が隆寛の股間を弄る。ひゃっ、と変な声を出した隆寛。 「貴重な何もない日なんだぜ?俺はずっといちゃついておきたいな」 股間を弄りつつ、空いている手で乳首をキュッとつねる。 最近、乳首を開発されるようになってしまい、すっかり性感帯になったのだ。 「や…っ…」 カーテンの向こうから差し込む朝日。今日も一日いい天気になりそうなのに、朝からこれでは…… 「はは、もう辛そうじゃん」 反応してしまっているソレを見て、正嗣は嬉しそうに笑った。 「だっていやらしい触り方するから」 「まあね、そういう触り方したからね」 「ああッ…!そんな奥…っ、ンンッ!あっ…!」 リズム良く腰を奥まで突き上げると、隆寛は乱れていつものように甘い声を正嗣に聞かせる。腰を突き上げたり、ゆっくり回してみたり。グチュグチュと結合している場所から聞こえる音が、さらに気持ちを高めていく。 「誰が、我慢ッ、するって…?」 正嗣が腰を動かしながら、笑う。その言葉に隆寛も笑う。 我慢なんて、出来っこない。一日だって。 「ソコ、気持ちイイ…っ、あっ、あっ、も、ダメぇ…っ、イっちゃ…あああっ!」 ビクン!と隆寛は身体を仰け反らしてぼたぼたぼた、と白濁したソレが勢いよく吐き出した。 「あーあ、イッちゃったね。性交禁忌、出来てないじゃん」 額の汗を拭いながら、正嗣がそう言う。快楽で霞む視野。隆寛は思わず大きく息を吐いた。 「…正嗣も、だろ」 「まあね。俺はいま、隆寛と一緒にいて気持ちよくなった方が幸せだもん。先のことよりね」 力が抜けた隆寛の腰を持ち、再度奥へと突き刺す。隆寛はまた甘い声を出す。今度は正嗣の番だ。 「ああ、気持ちイイ…っ!出る…ッッ」 どくんと正嗣は隆寛の中で果てた。隆寛は正嗣から発射されたソレを中で受け止めた。 「言い伝えなんて都市伝説みたいなモノじゃないの?」 正嗣はベッドの中でそう言う。 それだけでは済まないモノもたくさんあるのだけどな、と隆寛が苦笑いする。まあ何にしろ言えることは、ただ一つ。 (僕らには「性交禁忌」なんて無理だな) おわり
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