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【綾瀬/磯山真凛】
お花摘みを終え指定された教室へ向かうと入り口に人だかりができていた。きゃあきゃあと雌共が黄色い声を上げる。
リア充爆発しろと唱えた時中心人物と目があった。…………なんだ、クソ兄貴かよ。
「真凛、遅い。どこ行ってた」
「教室では絶対話しかけないで、カビマニア」
「カビじゃない! あれは知的でハイセンスな愛すべき……の前になんで知ってる?!」
「エロ本落ちてないか探り入れた時に見つけた」
ごちゃごちゃ煩い兄を無視して教室に足を踏み入れた。本当に話しかけないでほしい。どこのどいつよ。双子を同じ檻に突っ込んだ馬鹿教師は。共食いしても知らないからね。
席を探すため座席表に落ちた長い黒髪を耳にかける。ふーん、窓際の一番後ろ……最高じゃねーか。
視線を上げると先程入学式で隣同士だったギャルとまた目があった。やばい狩られる。そう思い、財布を隠しながらすっと隣へ視線を移したその瞬間。
私の心臓はバーストし、かけらも残さずヒュイゴーした。
「おい、真凛。入り口で固まるなよ」
「あば、ばばばばばば」
「あん? どうした。顔、苔玉みたいな色になってるぞ」
「わっ……私帰る……帰るっかっらっ……ひっ必要な書類全部貰っとけクソ兄貴ぃいい!!」
入り口に群がる雌どもを押しのけ脱兎の如く飛び出した。
幻覚?妄想?スタンド?
胸が痛い。息をするのが辛い。
恋人なんかいらないし恋愛だって興味ない。野郎に無駄な労力と時間を費やするなら全て余すことなく推しに使うわ。
そう、そう思ってたのに……
「助けてっ、渚さまーーーー!!!」
推しが3次元に現れた時の選択肢なんて、乙女ゲームの覇者である私にも分かんなかった。
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