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【イノウエ/七海洋平太】
それにしても、ばあちゃん、入学式来るって言ってたけど無事に辿り着いたかな。 ばあちゃんは血圧が低いから朝が辛い。後でタクシーで到着してるはずだ。
俺が試験勉強する時、一番味方になってくれたのはばあちゃんだった。
右の方から振り返る。昔、喧嘩で殴られてから左目は見えにくい。だからもう癖になっていた。
当然、背の低いばあちゃんを探す出すことなどできず、代わりに後ろに座ってたヤツと目があった。
おお、こいつ、俺が理想とする「普通の男子高生」。
俺もこいつみたいな雰囲気目指していこう。
再び前を向く。それにしても、隣の「携帯」、カッコいいな。頭いいヤツなんだろうな。羨ましい。
俺とは違う堂々とした雰囲気。
俺もこんなだったら、母さんも誇らしかっただろうにな……。
一人でしんみりしながらも、ここにきた目的を思い出す。
そうだ、俺も。
挨拶を終えて壇上から戻ってくるクラスメイトに自分を重ねる。
俺も、こいつみたいになるんだ。
そして雰囲気は後ろのやつな!
意気揚々と背筋を伸ばした時、前の方に座っている女子が振り返った。 おっと。
女子に慣れてないので慌てて目を逸らした。クッソー、こんなんじゃダメなのに。 7つ穴の開いた耳を触ってしまうのは、昔から恥ずかしい時の癖だ。
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