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母・恵子
コンビニでおにぎりとサンドウィッチ等の軽食を購入して帰路に着く。
帰りの電車内で写メ日記と今日来店してくれた客の中でLINE交換をしてる客に御礼のLINEを送っていると、あっという間に自宅のある駅に着いた。レナとしての時間は自宅近くの駅に着いたところで一旦終わりだ。
『お母さん、私。今駅に着いたけど、何か買っていくものはある?』
『お帰り。遅くまで仕事大変だったね。卵が少なくなってきたから買ってきてくれる?疲れているところを悪いね』
スマホ越しに聞こえる母・恵子の声は思いの外元気そうだった。
駅に着くと決まって母に電話を入れる。そうする事でレナとしての時間は終わり、本名の川原 美奈子に戻れるのだ。そして電話をするのにはもう一つ理由がある。
母の恵子は数年前から認知症を発症しており、日々感情には波があった。顔を見なければ判断できない時もあるが、声は正直なので電話で話すとだいたい今の感情が穏やかか否かが解かる。今の声を聞く限り、比較的穏やかだ。
『大丈夫よ。じゃあ卵買って帰るから、もう少し待っててね』
今の穏やかな気分を刺激しないよう言葉を選び、明るい声で電話を切った。
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