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「おもたい!」
「良いよ、手を貸すから」
片手で持って背負うのが困難なようで、懐かしさを覚えながら陸の手助けをした。
2つ年上の克彦と違って、俺は陸とかなりの年齢差がある。
だが、手を貸す方も良いなと今日初めて実感した。
「できたっ」
「はっは、まだランドセルの方がデカく見えるな」
「おさかな、どこ?」
「もう付いてるぞ。ここに」
表面の端に付けられたバッジはランドセルを背負った陸からは見えない。
ふふ、と笑った陸はかなりご機嫌なようだ。
「陸しゃん、しゅくだいいっぱい出す」
「偉い偉い。でも最初はそんなに宿題ないだろうから大丈夫だよ」
陸がランドセルを背負っているだけなのにジワリと涙腺にきた。
やっぱり、松本さんと出会ってから俺は随分と弱くなってしまった気がする。
いや、きっと以前よりも人の温かさを知ったせいだ。
「満足か?」
「りょしゃん、ありがとぉ」
松本さんに抱きついた陸が少し泣きそうな顔をしていて、俺まで伝染しそうになる。
慌てて顔を逸らしたが、彼は陸を抱き上げて立ち上がると頭をクシャクシャとなでてきた。
「っ、やめてください。こんな場所で」
「泣きそうな顔すんなよ。お前の泣き顔には慣れねえんだっての」
「泣きません。ちょっと良いなって、思っただけですから」
そう言って陸を見れば瞳が揺れていて、なぜか必死に泣くのを我慢しているようだった。
「……陸、入学式の服も買わないとな」
コク、と頷くもいつも明るく笑う陸は松本さんにくっついて顔を隠してしまった。
そんなに嬉しいのか……
5歳ながらに抱えてきた悲しみがあったから、余計に。
「マーちゃん、いっしょとる」
「誠くんか?」
「うん……」
「ふ、そうだな」
頭をなでて改めて偉いなと思う。
やっぱり少しずつ成長しているようだ。
家に着いてからも、陸は姿見の前でランドセルを背負い、買っていたローファーを履いて楽しそうに見ていた。
初めの頃はニンジンのぬいぐるみを手放せない様子だったのに、もうそれもすっかり過去の話で。
「今日は鍋食うぞー。年明けは大掃除だ」
「なべー! ボクもつくるっ!」
「あぁ、こら。陸、靴は鏡の横に置いてきて。ランドセルも」
「あいっ」
まぁ……根本的なところは変わらない、けど。
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