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「もう全員揃ってるのか?」
出席者リストのチェックを覗く。クラス30人の内、26人が出席するというのは、初めての同窓会にしては高成績じゃないだろうか。
「ああ。お前で最後。溝口は、遅れるって連絡入ってるから」
「悪い。少し迷ったんだ」
言い訳しながら、会費を払う。
「だけど、幹事なんて面倒臭いモン、よく引き受けたなぁ」
昔の彼は、体型が示す通り、決してフットワークは軽くなかった。ましてや、人の先頭に立つリーダーシップなど微塵もなかった。
「あぁ……割りと自由が利くからなあ」
ポツンと呟く。彼の実家はクリーニング店だ。住宅兼工場の自営業だったが、数年前に親父さんが倒れてからは、大手チェーンの傘下に入り、工場取次店になったと聞く。
8年前、彼は就職した保険会社を辞めて、家業を継いでいた。
「そっか。で、親父さんの調子、どうなんだ?」
気を遣って声を潜めたのだが、彼の背後から「下田ー、時間!」という声がかかる。
「お、いけねっ! その話は後だ。早く入れ入れ」
慌てたシモッチに背中を押されて、店内に入る。小洒落た雰囲気など欠片もない、大衆居酒屋――リーズナブルが売りだと言わんばかりの開き直った簡素な設え。テーブルが20席程度ある。奥に見える小上がりは、荷物置場と化していた。
座席の指定はなく、かつての友達グループが三々五々固まっているようだ。
あちこちから「久しぶりー」とか、名前やあだ名を呼ぶ声がする。野郎どもは、何となく誰が誰だか見当が付くが――女性陣は、化粧のせいもあり、全くもって分からない。
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