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異星人オークション
「この部屋が、今日からお前の仕事場だ」
俺がそう告げると、そいつはおどおどと丸い眼で室内を見回した。
まるで筒のような形のつるっとした青い身体に、それぞれ腕が二本、足が二本。髪の毛の代わりに、背中に胴体と同じ色の青い触手を生やしたその顔の中心には二つの目があって、さらに大きく裂けた口が存在していると来た。地球人からすればどこからどう見ても化物としか思えないこの存在、正体はいわゆる異星人というヤツである。先日、俺が異星人オークションで競り落として来た存在だった。
「あの、ワタシは、此処で何をすれバ……?」
内部翻訳された片言の日本語でおどおどと告げるそいつ。可愛くも美しくもないバケモノを飼う趣味なんぞなかったが、いわゆる“商売道具”を買ったと思えば我慢できる範疇だ。そもそもオークションには、こいつよりもっと醜い化物などいくらでもいたのである。巨大な玩具に見えなくもないだけ、コイツはマシというものだ。しかも、食事も排泄もなく、日光だけで生きていけるスグレモノである。
「俺が指示をするまで何もするな、喋るな、黙って玩具のフリしてろ」
化物といえど、怯える生き物を支配できるというのはなかなかどうして気分がいい。会社では長らくペコペコ頭を下げるだけ、親にもガミガミ叱られてばかりで、学校時代でさえもスクールカースト最下層だった俺だ。産まれて初めて、誰かの上に立ち、命令できるポジションを会得できたのである。そのなんと、気分の良いものであることか。
「今日からお前を使って、俺は金を稼ぐんだ。お前、食ったもので“等価交換”ができる体質の異星人なんだろう?」
そいつのぶよぶよとした触手をぐいぐい引っ張って弄びながら、俺は笑って告げた。
「ずっと楽して金稼ぎがしてぇと思ってたんだよなあ。……お前には、俺の夢を叶えてもらうぞ?」
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