あと一歩

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* * * アプリを開いた私は、目を見張った。 ダイレクトメッセの数が、想像以上に多くて。 出会い目的の専用アプリ。 登録したプロフィール画像は、大したものじゃない。 ナチュラル……ではなく、ただのスッピン。 笑顔も、なんかぎこちない。 まるで学生証に貼られた、証明写真のよう。 それが、可愛い系やギャル系の中に紛れ込んでいる。 間違って登録しちゃった、……みたいな浮きぶり。 こんな女に会いたいとか、金を払ってまで抱きたいとか、思わないだろう。 良くて数件。……そう思っていたのに。 まさか、こんなに来るなんて。 ざっと数十件はある。 そのひとつひとつを開き、メッセージを確認していく。 「………」 携帯を操作する指の動きが、止まる。 男の欲望剥き出し。 がっついてるというか、飢えてるっていうか…… 人間の皮を被ったハイエナ、みたいな。 ………まぁ、そうだよね。 それ目的なんだから。 引き気味になりながらも、次々とメッセージを開いていけば……目に飛び込んできたのは── 「……え」 《処女なら、五万出すよ》 驚いて、思わず声が漏れる。 一万円とか……中には三千円という低い金額提示がある中……これは、飛び抜けて高い。 でも……それがかえって恐怖心を煽る。 五万円分、何をされるのか──何か裏がありそうで……怖い。 ──だけど。このままだったら、何も変わらない…… 意を決し、私は返信ボタンを押した。
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