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五万の価値 *
* * *
「……そろそろ、動くね」
はぁ……、と熱い息を漏らしながら、男がゆっくりと腰を動かす。
半分ほど肉茎を引き抜かれ、圧迫された膣内と入り口が擦り上げられる。自慰で得られる快感とは違う……ピリピリとした、何ともいえない感覚。
挿った時よりも、太さと硬さが少しだけ緩んだような気がする。……痛くはない。
けど、気持ち悪い。ナカで繋がる行為そのものよりも、ベトベトしたおじさんの肌が、私の肌と接触するのが。
「……ハァ、……
やっぱり処女の生ハメは、違うね……ハァ、ハァ……」
ズッ……ズッ……
勿体ぶっているのか、味わってるのか。動きが鈍い。
もう早くイッて、早く終わらせてよ。
「誰も踏み込んだ事のない、狭い孔に突っ込んで……開通させる感じと、この強い圧迫感。……ハァ、ハァ……いいね、ゾクゾクするよ……良く締まって、気持ちイイ……」
「……」
そう……なんだ。
私には良く解らない価値観。
処女に拘る人は、そうなのかもしれない。でも、適齢期をとうに過ぎたおばさんの処女だったら、流石に引くよね。きっと。
結局処女なんて、単なる付加価値に過ぎない。……あ、でも『処女は重い』とか『面倒』って言ってた男性もいるし。付加価値かどうかなんて、個人の問題か……。
すぐ上空で、ハァハァと漏れる、おじさんの熱い口臭。体臭、加齢臭と混ざり合い、辺りの空気は混沌としている。更に、のし掛かってくる肉塊のせいで、息苦しくてたまらない。
辛いんだろう。腰の動きが完全に止まり、目をギュッと瞑った。
「……ぅうっ、……ごめんね。やっぱり、持ちそうにない……」
「……」
「初めてなのに、……ごめんね。
気持ち良く、させてあげられなくて……」
言い切るか切らないうちに、再開されるピストン。
今までとは違う、激しく速い動きに、ナカが何度も擦られ、抉られる。
グチュッ、グチュッ……
下から聞こえる、卑猥な水音。揺れる視界。
……ハッ、ハッ、
パンパンパンッ……
「………」
数往復の後、おじさんは……果てた。
「……約束の、五万ね」
「………」
手渡しをされ、受け取ったその紙幣に……重みなんて感じない。
長時間拘束されて、汗水垂らして得たバイトのお金と、見た目は何ら変わりはないのに。
不純。──きっとこのお金も、おじさんが汗水垂らして得たもの。
なのに、私の手に渡った途端、汚れて価値の下がった代物になった気がする。
「ありがとう。……最高だったよ」
単なる、援交。
ラブホテルから出てしまえば、もう二度と会うことはない、赤の他人。処女専なら尚更。
それを惜しんでいるのか。決まり文句なのか。……もう、それすらよく解らない。
「……」
──ありがとう、おじさん。
決まり文句を、心の中で呟く。
でも、少しは感謝してる。私の嫌がる事は、決してしなかったから。
生でしていい代わりに、胸には一切触れない──その条件をのみ、最後まで守ってくれた。
それに、こんな私の処女を、五万で買ってくれたんだから……
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